職場に監視カメラを付けるとき|従業員への周知と、社内ルールの作り方
職場に監視カメラを付けるときは、目的を決めて社内規程に定め、従業員に明示することが出発点です。個人情報保護委員会は、従業者をカメラで監視(モニタリング)する場合の留意点として、目的の明示、責任者と権限、運用ルール、ルールどおりに行われているかの確認、の4つを示しています。
このページでは、その4つの留意点をもとに、職場の監視カメラの社内ルールの作り方と、付ける場所・付けない場所の考え方を整理します。
※本記事は一般的な解説です。個別の事案の判断は、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
個人情報保護委員会が示している4つの留意点
個人情報保護委員会のQ&A(Q5-7)では、個人データを扱う従業者を対象にビデオ等でモニタリングを行う場合、次の点に留意することが考えられるとしています。

- モニタリングの目的をあらかじめ特定し、社内規程等に定め、従業者に明示する
- モニタリングの実施に関する責任者と、その権限を定める
- あらかじめ実施のルールを策定し、その内容を運用者に徹底する
- ルールに従って適正に行われているか、確認を行う
あわせて、重要事項を定めるときは、あらかじめ労働組合等に通知し必要に応じて協議を行うこと、定めたときは従業者に周知することが望ましいとしています。
社内ルールに書いておくこと
| 項目 | 書いておく内容の例 |
|---|---|
| 目的 | 防犯、情報漏洩の防止、事故・トラブルの事実確認 など |
| 設置場所 | どこに何台。撮影する範囲 |
| 映像を見られる人 | 責任者と、見られる担当者。見る場面(事故・申告があったときなど) |
| 保存期間 | 何日残し、どう消すか |
| 持ち出し・提供 | 映像を書き出す手順、記録の残し方、社外への提供の判断者 |
| 確認 | ルールどおりに運用されているか、誰がいつ確認するか |
目的を決めておくと、映像を別の目的に使ってよいかで迷ったときの判断基準になります。たとえば防犯の目的で設置したカメラの映像を、別の目的に使う場合の考え方は監視カメラと個人情報保護法で解説しています。
付ける場所・付けない場所
付けることが多い場所
- 出入口・通用口(誰がいつ出入りしたか)
- 受付・来客スペース
- 書類やデータを保管する部屋、サーバー室
- 現金や在庫を扱う場所
- 工場や倉庫の通路・作業場(安全や事故の確認)
避けたい場所・向き
- 更衣室、トイレ、休憩室など、プライバシーへの配慮が特に求められる場所
- 個人の机やパソコンの画面を大きく映す向き(画面の情報そのものが映像に残ってしまいます)
- 目的に関係のない範囲(隣の敷地、通行人ばかりが映る向きなど)
音声の録音
カメラによっては音声も記録できます。会話は映像より踏み込んだ情報になるため、音声を記録する場合は目的と必要性をより慎重に検討し、社内規程に明記して周知することをおすすめします。
従業員への知らせ方
- 社内規程(就業規則や情報管理規程など)に、目的・設置場所・見る人を記載する
- 説明会や社内掲示、メールなどで周知する
- 入口などに「カメラ作動中」の掲示をする(掲示の考え方は監視カメラと個人情報保護法を参照)
映像を見る仕組みも、ルールに合わせて作る
ルールを決めても、誰でも映像を見られる状態では守れません。録画機や管理ソフトの利用者を分け、見られる人を限定します。見る場所と権限の考え方は監視カメラの管理システム(VMS)とはで解説しています。
従業員の同意は必要?法律の考え方
職場の監視カメラに関係する主なルールは、個人情報保護法と、労働関係のルールです。
- 個人情報保護法…特定の人が分かる映像は個人情報です。取得するときは利用目的を特定し、本人に通知または公表する必要がありますが、防犯目的のように取得の状況から利用目的が明らかな場合は、通知・公表が要らないとされる場合があります。考え方は監視カメラと個人情報保護法で解説しています。
- 就業規則…モニタリングのルールを就業規則に定める場合は、就業規則の変更の手続(労働基準法第90条にもとづく、労働者の過半数で組織する労働組合などからの意見の聴取など)が必要です。
- 個人情報保護委員会のQ&A…前の章の4つの留意点に加え、重要事項を定めるときは労働組合等に通知し必要に応じて協議すること、定めたときは従業者に周知することが望ましいとされています。
法律が一律に「同意書」を求めているわけではありませんが、目的を明らかにして周知し、納得を得ながら進めることが、トラブルを防ぐいちばんの近道です。
職場の監視カメラのメリット・デメリット
| メリット | デメリットと対策 |
|---|---|
| 防犯・盗難の抑止 | 「監視されている」と感じてストレスになる → 目的と見る人を明示し、作業の評価には使わないなど範囲を決める |
| トラブルやクレームの事実確認ができる | 映像の管理に手間がかかる → 保存期間と削除の手順を決める |
| 従業員を守れる(言いがかり・ハラスメントの事実確認) | 映像が漏れると問題になる → 見られる人を限定し、書き出しを記録する |
| 事故・ヒヤリハットの把握 | 設置や保守の費用がかかる → 必要な場所に絞る |
パワハラ・トラブルの事実確認に使うとき
監視カメラの映像は、職場のトラブルやハラスメントの申告があったときに、いつ・どこで・何があったかを確かめる材料になります。そのためには、社内ルールに「申告があったときに、誰が、どの手順で映像を確認するか」を書いておくことが大切です。映像を確認する人を限定し、確認したことを記録します。音声は会話の内容まで残るため、録音するかどうかは特に慎重に決めます。
社員寮・休憩スペースはどう考える?
社員寮や休憩スペースは、従業員の私的な時間を過ごす場所です。玄関や共用の出入口など防犯上必要な場所に限り、個室や、くつろぐための空間を映さない配置にします。設置する場合は、入居者・利用者に目的と設置場所を知らせます。
社内規程に入れる項目の例
規程の書き方は会社ごとに違いますが、次のような項目を入れておくと、運用で迷いません(項目の例です。条文は専門家と確認してください)。
- 目的…防犯、情報漏洩の防止、事故・トラブルの事実確認のために監視カメラを設置する
- 設置場所…別紙の図面のとおり。更衣室・トイレ・休憩室には設置しない
- 管理責任者…総務部長を管理責任者とする
- 映像を見られる者…管理責任者と、管理責任者が指名した担当者に限る
- 映像を見る場面…事故・トラブル・申告があったとき、定期点検のとき
- 保存期間…録画から30日間とし、期間を過ぎた映像は自動で上書きする
- 提供…社外への提供は管理責任者が判断し、提供の記録を残す
- 周知…規程は従業員に周知し、出入口に掲示する
- 見直し…運用状況を年1回確認し、必要に応じて見直す
設置前の説明で伝えること
- カメラを付ける目的
- 付ける場所と、映る範囲(図面で示すとわかりやすい)
- 映像を見る人と、見る場面
- 映像を何に使わないか(たとえば、日常の勤務評価には使わない、など決めた場合)
- 保存期間と、映像の扱いについての問い合わせ先
説明のあとに出た質問と答えを記録しておくと、後から入った従業員への説明にも使えます。
よくある質問
Q. 従業員の同意書は必要ですか?
A. 一律に同意書が必要とは限りません。個人情報保護委員会のQ&Aでは、目的を社内規程等に定めて従業者に明示することや、重要事項を定めたときに周知することが示されています。どこまで必要かは目的や運用で変わるため、専門家にご確認ください。
Q. 防犯カメラの映像を、勤務態度の確認に使ってもよいですか?
A. あらかじめ定めた目的の範囲かどうかが判断の分かれ目になります。使い方を広げたい場合は、目的を見直して社内規程と周知をやり直すことを検討してください。
Q. 従業員から映像を見せてほしいと言われたら?
A. 法律上の扱いは、録画の仕組みや状況によって変わります(考え方は監視カメラと個人情報保護法を参照)。誰が判断し、どう対応するかを社内ルールに入れておくと迷いません。
Q. 従業員に知らせずにカメラを付けてもよいですか?
A. 個人情報保護委員会のQ&Aでは、モニタリングの目的を社内規程等に定めて従業者に明示することが示されています。知らせずに設置する方法は、トラブルのもとになりやすいため避けてください。特別な調査が必要な場合は、事前に弁護士にご相談ください。
Q. 監視カメラがあると、かえって職場の雰囲気が悪くなりませんか?
A. 目的が分からないと、そう感じる人が出ることがあります。「何のためか」「誰が見るか」「何に使わないか」を最初に説明すると、受け止め方が変わります。
まとめ
職場の監視カメラは、目的の明示、責任者と権限、運用ルール、ルールどおりかの確認、の4つを軸に社内ルールを作ると運用しやすくなります。付ける場所と向きもルールに合わせて決めましょう。法人の導入全体の進め方は法人の監視カメラ導入ガイドにまとめています。設置場所の検討から機器の選定まで、お気軽にお問い合わせください。
出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」Q5-7

