監視カメラと個人情報保護法|掲示は義務?設置前に決める3つのこと
「防犯カメラ作動中と貼らないと違法なのか」「録画した映像を警察に渡していいのか」——監視カメラを運用していると、こうした疑問に必ず突き当たります。
このページでは、個人情報保護委員会が公表している「カメラに関するQ&A」をもとに、実務で判断が必要になる場面を整理します。条文の位置も併記しますので、社内ルールを作る際の参考にしてください。
※本記事は制度の一般的な解説です。個別の事案の判断は、所管の窓口や専門家にご確認ください。
まず前提:カメラ映像は「個人情報」です
特定の個人を識別することができる映像は、個人情報にあたります。顔がはっきり写っていれば、当然その対象です。

ただし、よく誤解されるのが次の点です。個人情報であることと、「個人情報データベース等」にあたることは別です。
個人情報保護委員会のQ&A(Q1-41)では、特定の個人に係る映像を検索できるように「体系的に構成」されていない限り、個人情報データベース等には該当しないと説明されています。日時では検索できても、特定の人物では検索できない——通常の録画機はこの状態です。
また、犯罪行為が疑われる映像が映っただけでは、要配慮個人情報にはあたりません(Q1-31)。「犯罪の経歴」や「刑事事件の手続が行われたこと」とは別だからです。
「防犯カメラ作動中」の掲示は義務ですか?
ここが最も多い質問です。答えは「条件によって変わる」です。順を追って説明します。

① 利用目的の通知・公表について
個人情報を取り扱う場合、原則として利用目的を本人に通知するか公表しなければなりません。ただし、カメラの設置状況などから利用目的が防犯目的であることが明らかな場合は、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」(法第21条第4項第4号)にあたり、通知・公表は不要と考えられる、とされています(Q1-13)。
② カメラの存在を認識できるようにする措置について
一方で、こちらは別の話です。事業者は不正な手段で個人情報を取得してはならないため(法第20条第1項)、カメラで自分の情報が取得されていることを本人が容易に認識できない場合は、認識できるようにする措置を講じなければなりません。
その例として挙げられているのが、入口やカメラの設置場所への「防犯カメラ作動中」の掲示です。さらにQ&Aでは、外観上カメラだと明らかな場合であっても、掲示等を行うことでより容易に認識できるようにすることが望ましいと述べられています。
整理すると、こうなります。
- 防犯目的が明らかなら、利用目的の通知・公表は不要
- ただし気づきにくい設置なら、掲示等の措置が必要
- 明らかな設置でも、掲示しておくほうが望ましい
実務上は、掲示しておくのが無難という結論になります。掲示自体に費用はかからず、トラブルの予防にもなります。
設置前に決めておく3つのこと
運用でつまずかないために、設置前に次の3点を決めて、文書に残しておくことをおすすめします。

- 利用目的…何のために撮るのか。防犯か、品質管理か、労務管理か。目的の範囲を超えた利用はできません。
- 撮影範囲…どこを写すか。特に、更衣室・トイレ・浴室などは撮影してはいけません。また、隣家や公道を必要以上に写さない配慮も求められます。
- 保存期間と消去のルール…何日残すか。法第22条により、利用の必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めることとされています(Q5-4)。
あわせて、「誰が映像を見られるか」も決めておきます。閲覧できる人を限定し、閲覧の記録を残す運用にしておくと、内部からの持ち出しを抑止できます。
保存期間の決め方は「監視映像は何日残せる?保存期間の決め方と、長期保存の選択肢」で詳しく解説しています。
顔認証(顔識別機能)を使うなら、ルールが変わります
ここは特に注意が必要です。顔画像から顔特徴データを抽出して照合する「顔識別機能付きカメラシステム」は、通常の防犯カメラとは扱いが異なります。

| 項目 | 従来型の防犯カメラ | 顔識別機能付きカメラシステム |
|---|---|---|
| 利用目的の通知・公表 | 防犯目的が明らかなら不要 | 必要 |
| 利用目的の特定 | 防犯目的であること | 防犯目的に加え、顔識別機能を用いていることも明示 |
| 掲示の内容 | 「防犯カメラ作動中」等 | 運用主体・利用目的・問い合わせ先・詳細ページのURLやQRコードの掲示が望ましい |
| 登録データの基準 | — | 対象とする犯罪行為等をあらかじめ明確化し、蓋然性が高い者に厳格に限定 |
理由は、カメラの外観からは顔識別機能が使われていることが分からないためです。「取得の状況からみて利用目的が明らか」とはいえないため、通知・公表が必要になります(Q1-14)。
また、照合用データベースへの登録基準は、文書化された統一的な基準を作り、担当者が誰でも同じ判断ができる体制にすることが重要とされています。「なんとなく怪しい人を登録する」という運用は認められません。
目的外に使うときは、同意が必要です
防犯目的で設置したカメラの映像を、マーケティングなどの商業目的に使う場合は、あらかじめ本人の同意を得なければなりません(法第18条第1項/Q1-15)。
「せっかく撮っているのだから、来店客の分析にも使いたい」というご相談はよくいただきますが、防犯目的で集めた映像をそのまま転用することはできません。分析目的で使うなら、設置の段階から利用目的に含めて特定し、通知・公表しておく必要があります。
なお、人物を全身のシルエットに置き換えた人流データや、性別・年齢といった属性情報のみであれば、抽出元のカメラ画像等と容易に照合できる場合を除き、個人情報には該当しないとされています(Q1-12)。分析用途では、この考え方が設計の分かれ目になります。
ネットワークカメラだからこそ必要な安全管理
見落とされがちですが、ここが実務で最も重要かもしれません。個人データの安全管理措置(法第23条)として、Q&A(Q10-8)では次の5つの観点が挙げられています。

- 組織的…取り扱える従業者を限定する、責任者を定める、規程を整備する
- 人的…従業者への研修を実施する
- 物理的…カメラや記録媒体の盗難・紛失を防ぐ
- 技術的…アクセス制御、漏えい防止、パスワード設定、アクセスログの取得・分析による不正利用の監視
- 外的環境の把握…外国でデータを取り扱う場合、その国の制度を把握したうえで必要な措置を講じる
Q&Aでは、IPカメラ(ネットワークカメラ、Webカメラ)のようにネットワークを介して映像を扱う場合に、技術的なアクセス制御や漏えい防止策が必要であることが明示されています。
実際、初期パスワードのまま運用されている機器は珍しくありません。インターネットからアクセスできる状態で初期設定のままだと、第三者に映像を見られる危険があります。設置業者に任せきりにせず、次の点は確認しておいてください。
- 初期パスワードから変更されているか
- 不要な外部公開(ポート開放)がされていないか
- ファームウェアが更新されているか
- 誰がアクセスできる設定になっているか

よくあるご質問
Q. 「防犯カメラ作動中」の掲示は法律上の義務ですか?
A. 掲示そのものを直接義務づけた規定があるわけではありません。ただし、カメラで自分の個人情報が取得されていることを本人が容易に認識できない場合は、認識できるようにする措置を講じなければならないとされており(法第20条第1項)、その例として入口やカメラ設置場所への掲示が挙げられています。外観上カメラと分かる場合でも、掲示することがより望ましいとされています。実務上は掲示しておくのが無難です。
Q. 防犯目的なら、利用目的を公表しなくてもよいのですか?
A. カメラの設置状況等から利用目的が防犯目的であることが明らかな場合は、「取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合」(法第21条第4項第4号)にあたり、通知・公表は不要と考えられるとされています。ただし顔識別機能を使う場合は別で、通知・公表が必要になります。
Q. 録画映像を警察に提供してもよいですか?
A. 個人データの第三者提供にあたるため、原則として本人の同意が必要ですが、法令に基づく場合など例外が定められています。捜査関係事項照会など、根拠を確認したうえで対応するのが実務です。社内で誰が判断し、どう記録を残すかをあらかじめ決めておくことをおすすめします。個別の判断は専門家にご確認ください。
Q. 従業員を撮影する場合、注意点はありますか?
A. 利用目的を明確にし、従業員に周知しておくことが基本です。防犯目的か、労務管理目的かで扱いが変わります。また、休憩室や更衣室など、プライバシーへの配慮が特に必要な場所の撮影は避けてください。就業規則や社内規程との整合も確認しておくと安全です。
Q. 隣の家や公道が写り込んでしまいます。問題ありませんか?
A. 防犯上必要な範囲を超えて他人の敷地や住居を継続的に撮影することは、トラブルの原因になります。カメラの向きや画角の調整、機種によってはマスキング機能(特定の範囲を黒く塗りつぶす設定)で対応できます。設置時にご相談いただければ、写り込みを抑える設計をご提案します。
Q. 通常の防犯カメラの録画は「個人情報データベース等」になりますか?
A. 特定の個人に係る映像情報を検索できるように体系的に構成されていない限り、個人情報データベース等には該当しないと解されています(Q1-41)。日時で検索できても特定の人物では検索できない場合は該当しません。ただし個人情報であることに変わりはないため、適切な取扱いは必要です。

まとめ
- 特定の個人を識別できる映像は個人情報。ただし通常の録画は個人情報データベース等には該当しないことが多い
- 防犯目的が明らかなら利用目的の通知・公表は不要。ただし掲示はしておくのが無難
- 設置前に利用目的・撮影範囲・保存期間を決め、文書に残す
- 顔認証を使うなら通知・公表が必要。登録基準の文書化も求められる
- 防犯目的の映像を商業目的に転用するには本人の同意が必要
- ネットワークカメラは技術的な安全管理が必須。初期パスワードのままにしない
「撮影範囲がこれで問題ないか」「掲示をどこに出すべきか」「初期設定のままで危なくないか」といったご相談も承っています。設置済みの機器の点検からでも対応できます。お問い合わせフォームまたはお電話(0120-495-666)からどうぞ。
出典:個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」より「カメラに関するQ&A」(令和5年5月更新)
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