防爆カメラとは?仕組み・ゾーン・国内の型式検定と選び方をわかりやすく解説
防爆カメラとは、可燃性のガス・蒸気・粉じんがある場所でも、カメラ自体が火種にならないように作られた監視カメラです。「防爆監視カメラ」「防爆仕様カメラ」と呼ばれることもありますが、指しているものは同じです。
このページでは、防爆カメラがなぜ必要なのか、どんな場所で使うのか、そして日本国内で使うときに見落としやすい「ゾーン」と「型式検定」の考え方を、順に整理します。機種を比べたい方は、防爆カメラの製品一覧と選び方もあわせてご覧ください。
防爆カメラとは
電気で動く機器は、内部の接点で小さな火花が出たり、部品が熱を持ったりします。普段は問題になりませんが、周りの空気に可燃性のガスや粉じんが一定の濃度で混ざっていると、その火花や熱が引火のきっかけになります。
防爆カメラは、この「火種になる可能性」を構造で封じ込めた監視カメラです。監視カメラでよく使われるのは耐圧防爆構造で、厚い金属の容器にカメラを収め、万一内部で爆発が起きても容器が圧力に耐え、外の雰囲気に炎が伝わらないようにしています。見た目がずっしりとした円筒形や箱形なのはこのためです。
防爆構造の種類
防爆の方法は1つではありません。代表的なものは次のとおりで、監視カメラでは耐圧防爆が中心です。
- 耐圧防爆(d)…頑丈な容器で内部の爆発を閉じ込め、外へ火炎を出さない方式。監視カメラの主流です。
- 内圧防爆(p)…容器の中に清浄な空気などを送り込んで圧力を保ち、可燃性ガスが入り込まないようにする方式。
- 安全増防爆(e)…通常の運転で火花や高温が出ない部分について、さらに安全性を高めた方式。端子箱などに使われます。
- 本質安全防爆(i)…回路を流れる電気のエネルギーを、着火しない大きさに抑える方式。センサー類に多い方式です。
普通の屋外カメラでは代わりにならない理由
よくいただく質問に「防水・防塵(IP66など)の屋外カメラなら大丈夫では?」というものがあります。答えはいいえです。
- IP66 などの保護等級…水やほこりが中に入るのを防ぐ性能です。
- 防爆…中で火花や熱が出ても、外の可燃性ガス・粉じんに引火させない性能です。
この2つはまったく別の性能で、IP等級が高くても防爆の代わりにはなりません。危険場所に一般のカメラを置くことは、法律上も認められていません。

防爆カメラが必要になる場所
可燃性のガス・蒸気・粉じんを扱う、または発生する可能性がある場所が対象です。たとえば次のような現場があります。
- ガス・蒸気…化学・石油・ガス関連のプラント、溶剤を使う工程、塗装設備、水素を扱う設備、危険物の貯蔵所など
- 粉じん…小麦粉・でんぷん・砂糖などの粉体を扱う食品工場、木粉や樹脂粉、金属粉が舞う工程など
ただし、「この場所は危険場所か、どの区分か」を決めるのは、カメラの販売店や工事会社ではありません。お客様の設備設計・電気設計で定められた危険場所区分(危険場所区分図)が基準になります。当社はその区分に合う機種と工事方法をご提案します。
ガスと粉じんは別の区分(ゾーン)で考える
危険場所は、爆発性の雰囲気がどれくらいの頻度で生じるかによって3段階に分かれます。そしてガス・蒸気と粉じんでは、区分の番号そのものが違います。

| 状態 | ガス・蒸気 | 粉じん |
|---|---|---|
| 爆発性雰囲気が連続的、または長時間存在する | Zone 0 | Zone 20 |
| 通常の運転で生じる可能性がある | Zone 1 | Zone 21 |
| 通常は生じず、生じても短時間 | Zone 2 | Zone 22 |
防爆カメラの表示では、記号の「Ⅱ」がガス・蒸気向け、「Ⅲ」が粉じん向けを表します。ガス向けの表示しかない機器は粉じんの危険場所では使えず、その逆も同じです。食品工場の粉体工程のように「ガスはないが粉じんがある」現場では、粉じん向けの表示があるかどうかを最初に確認します。
日本で使うには「型式検定」の確認が必要
海外製の防爆カメラの多くは、ATEX(欧州)や IECEx(国際)の認証を取得しています。しかし、ATEX・IECEx の認証があるだけでは、日本国内の危険場所でそのまま使えるとは限りません。
日本では、爆発性の雰囲気がある場所で使う電気機械器具について、労働安全衛生法にもとづく型式検定に合格したもの(または、国際規格にもとづいて製造され、同等以上の防爆性能が確認されたもの)を使うことになっています。機種を選ぶときは、カタログの防爆表示だけでなく、国内の型式検定の合格番号があるかを確認します。輸入品で国内検定のない型番は、性能が高くても候補から外れることがあります。
防爆記号の読み方(かんたん版)
カタログには「Ex db ⅡC T6 Gb」のような記号が書かれています。最低限、次の4か所を見れば、自分の現場に合うかどうかの目安になります。

- db…防爆構造の種類。d は耐圧防爆構造です。
- ⅡC…対象となるガスのグループ。ⅡA・ⅡB・ⅡC の順に対応範囲が広がり、ⅡC は水素やアセチレンを含むグループまで対応します。
- T6…温度等級。機器の表面温度の上限を表し、T1〜T6 の数字が大きいほど上限が低くなります。扱うガスの発火温度に合わせて選びます。
- Gb…機器の保護レベル。G はガス向け、粉じん向けは D で表されます。
記号のより詳しい読み方と、主な機種の表示の比較は防爆カメラの製品一覧と選び方にまとめています。
防爆カメラの選び方 4つの確認

- 設置場所の区分…危険場所区分図で、カメラを付ける位置がどのゾーンかを確認します。
- ガス・粉じんの種類…ガスのグループ(ⅡA〜ⅡC)と温度等級、粉じんの場合は粉じん向けの表示があるかを確認します。
- 何を映したいか…設備の状態を見たいのか、人の出入りを見たいのか、夜間も必要か、旋回(PTZ)やズームが必要かで機種が変わります。設備の異常発熱を見たい場合はサーマル(熱画像)カメラも候補になります。
- 配線と電源…防爆カメラは配線の引き込み方にも決まりがあります。防爆に対応したケーブルグランドや継手、配管の処理が必要です。LANケーブル1本で給電できるPoE対応の機種を選ぶと、配線の本数を減らせる場合があります。
設置工事で押さえること
防爆カメラは、本体が防爆でも、取り付け方や配線が条件を満たしていなければ防爆の性能が保てません。工事では主に次の点を確認します。
- 配線の引き込み…取扱説明書で指定された方法(防爆に対応したケーブルグランドや、配管・シーリングの処理など)で引き込みます。一般の継手をそのまま使うことはできません。
- 接地…本体の接地端子を確実に接地します。
- 取り付け強度…防爆カメラは一般のカメラより重いため、取付金具と取り付け先が重さや振動に耐えられるか、ボルトの緩み止めがあるかを確認します。配管やケーブルの重みがカメラの入口にかからないように支持します。
- 作業の手順…危険場所での作業は、お客様の作業許可や安全手順に沿って進めます。設備を止めずに作業できるか、どの時間帯なら入れるかも事前に打ち合わせます。
今ある防爆カメラを入れ替えるときの注意
防爆カメラは長く使われることが多く、故障をきっかけに「同じ型番がもう売っていない」と気づく場合がよくあります。入れ替えでは、次の点を確認します。
- 今のカメラの防爆表示と銘板…新しい機種も、同じ区分・同じガス(粉じん)に合う表示が必要です。銘板の写真があれば、そこから条件をたどれます。
- 映像の方式…古いアナログ方式のカメラを、ネットワークカメラに切り替えるかどうか。切り替える場合は、配線や録画機も合わせて見直します。
- 今の配線・配管が使えるか…引き込みの方式や太さが新しい機種に合うかを確認します。合わない場合は、引き込み部分の工事が必要です。
費用の考え方
防爆カメラは、金属製の防爆容器や認証にかかる費用があるため、一般の監視カメラより本体価格が高くなります。加えて、防爆エリア内の配線は専用の部材と施工が必要になるため、工事費も一般的な設置より大きくなりがちです。
総額は、台数よりも「どのゾーンに何台」「どこまで配線を引くか」「録画や監視をどこで行うか」で大きく変わります。危険場所区分図や設置したい位置の写真があれば、概算のご案内がしやすくなります。

設置例
それぞれの機種の詳しい解説は、防爆カメラ XD-500IP-2M(オリエントブレイン)と防爆カメラ NWEX-CM500Ha(宮木電機)をご覧ください。
取り扱っている防爆カメラ
当社では、宮木電機製作所、オリエントブレイン、AXIS、Hikvision などの防爆カメラを取り扱っています。固定型・旋回型(PTZ)・サーマルカメラまで、メーカーをまたいで比べられるように、防爆カメラの製品一覧と選び方にまとめています。オリエントブレインの機種はオリエントブレイン 防爆カメラ製品一覧、プラント全体の監視の考え方はプラント・危険物施設の監視カメラでも紹介しています。
よくある質問
Q. 危険場所の区分が分からないのですが、相談できますか?
A. はい。区分そのものはお客様の設備設計で定められているため、まずは設備のご担当者に危険場所区分図があるかをご確認ください。図面や、設置したい場所の写真をお送りいただければ、その条件に合う機種と工事方法をご案内します。
Q. いま付いている防爆カメラが故障しました。同じ型番がもうありません。
A. 型番が分からない場合も、銘板や本体の写真からお調べします。同じ区分・同じ防爆表示に合う現行機種への入れ替えや、録画機側の更新も含めてご提案します。
Q. 防爆カメラの映像は普通の録画機で録画できますか?
A. 防爆カメラ自体はネットワークカメラやアナログカメラとして映像を出すため、録画機側は防爆エリアの外に置くのが一般的です。カメラの映像方式に合う録画機を選べば、他のカメラとまとめて録画・監視できます。
まとめ
防爆カメラは、可燃性のガスや粉じんがある場所で、カメラが火種にならないように作られた監視カメラです。選ぶときは、①設置位置のゾーン、②ガスと粉じんのどちらか、③国内の型式検定、④配線方法、の4点を順に確認します。区分図や現場写真をもとに、機種選定から設置、保守までご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。



