監視カメラのレンズは何mmを選ぶ?画角と「どこまで見えるか」の考え方
「もっと広く写したい」「顔まではっきり分かるようにしたい」——監視カメラの設置で必ず出てくる要望です。
ところが、この2つは同時には成り立ちません。広く写せば1人あたりの解像度は下がり、はっきり写そうとすれば範囲は狭くなります。
このページでは、「どこまで見えるか」を数字で判断する考え方と、レンズの選び方を整理します。感覚ではなく基準で話せるようになると、機種選定で迷わなくなります。
「見える」には4段階あります(DORI)
監視カメラの世界には、映像の使いみちを4段階で表す国際的な指標があります。DORI と呼ばれ、国際規格 IEC EN 62676-4 で定義されています。

| 段階 | 目的 | 必要なピクセル密度 |
|---|---|---|
| Detection(検知) | そこに人がいる/何かが動いたと分かる | 25 px/m |
| Observation(観察) | 服装や動作の様子が分かる | 62.5 px/m |
| Recognition(認識) | 知っている人かどうか見分けられる | 125 px/m |
| Identification(識別) | 初対面でも個人を特定できる | 250 px/m |
「px/m(ピクセル毎メートル)」とは、映像の中で1メートルの幅が何ピクセルで表現されているかを示す数値です。数字が大きいほど、その被写体は精細に写っています。
実務で重要なのは、用途によって必要な段階が違うという点です。「工場の敷地に人が入ったら分かればよい」なら検知(25 px/m)で足ります。「万一のときに人物を特定したい」なら識別(250 px/m)が必要で、必要な精細さは10倍になります。
※IEC EN 62676-4は2025年に改訂され、段階がさらに細かく分けられています。ここでは広く使われている4段階で説明します。
焦点距離(mm)と画角の関係
レンズの「mm」は焦点距離を表します。関係はシンプルです。

- 数字が小さい(広角)…広い範囲が写る。ただし1人あたりのピクセル密度は下がる
- 数字が大きい(望遠)…写る範囲は狭い。ただし遠くの被写体も精細に写る
つまり、レンズ選びは「範囲」と「精細さ」の配分を決める作業です。1台で両立させようとすると、たいていどちらも中途半端になります。広く見るカメラと、要所を押さえるカメラを分けるほうが、結果的にうまくいきます。
同じ「4mm」でも、画角は機種によって違います
ここは誤解が多いところです。焦点距離が同じでも、撮像素子(センサー)の大きさが違えば画角は変わります。センサーが大きいほど、同じ焦点距離でも広く写ります。
そのため「4mmなら約◯度」と一律に言うことはできません。実際の画角は、機種ごとの仕様表に記載された水平画角の値で確認してください。カタログには「水平◯°〜◯°」という形で記載されています。
弊社では、設置予定の場所と「何を見たいか」をお聞きしたうえで、機種ごとの実際の画角にもとづいてご提案します。図面があれば、どの位置に何mmのカメラを置けばどこまでカバーできるかを机上で検討できます。

実務での選び方:目的から逆算する
順番を間違えないことが大切です。「何mmにするか」から考えるのではなく、「何をしたいか」から決めます。

- 目的を決める…検知でよいか、認識まで必要か、識別まで求めるか(DORIのどの段階か)
- 対象までの距離を測る…設置位置から、見たい対象までの距離を確認します
- 必要な範囲を決める…横方向に何メートル写ればよいか
- 機種と焦点距離を選ぶ…その距離・範囲で必要なピクセル密度を満たす組み合わせを選びます
たとえば「駐車場の出入口で車種と動きが分かればよい」のと「駐車場に入る人物を特定したい」のとでは、同じ場所でも必要な機種がまったく変わります。目的が曖昧なまま台数と金額だけで決めると、設置後に「これでは分からない」となりがちです。
固定焦点・バリフォーカル・ズームの使い分け
レンズの方式によって、設置後の調整のしやすさが変わります。

| 方式 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 固定焦点 | 画角が固定。構成がシンプル | 写す範囲が最初から決まっている場所 |
| バリフォーカル | 設置時に手動で画角を調整できる | 現場で微調整したい場所 |
| 電動ズーム | 遠隔で画角を変えられる | 高所など、後から手が届きにくい場所 |
実務でよくあるのが、「設置してみたら思ったより狭かった/広かった」という事態です。高所や屋外配管の中を通す設置では、後からレンズを交換するのに足場が必要になることもあります。迷う場合は調整できる方式を選んでおくと安全です。
画素数を上げれば解決する、とは限りません
「4Kにすれば全部見えるのでは」というご相談をよくいただきます。ここは正確に理解しておく価値があります。
ピクセル密度は、画素数 ÷ 写している範囲で決まります。画素数を4倍にしても、写す範囲を4倍に広げれば、ピクセル密度は変わりません。「4Kで広角にする」と「フルHDで適切な画角にする」では、後者のほうが目的の被写体をはっきり写せることがあります。

あわせて、高画素化には次のような影響もあります。
- 録画容量が増える…同じ録画機なら保存できる日数が短くなります
- 夜間に不利になることがある…画素が細かいほど、1画素あたりに入る光の量は少なくなります
- 機器の消費電力が上がる…PoE給電の余裕を確認する必要があります
保存日数への影響は「監視映像は何日残せる?保存期間の決め方と、長期保存の選択肢」で詳しく解説しています。
よくあるご質問
Q. 何mmのレンズを選べばよいか、どう決めればいいですか?
A. 先に「何をしたいか」を決めてください。人がいることが分かればよいのか(検知)、知っている人かどうか見分けたいのか(認識)、個人を特定したいのか(識別)で、必要な精細さが変わります。そのうえで、設置位置から対象までの距離と、横方向に必要な範囲を測れば、適した焦点距離を絞り込めます。図面をお送りいただければ机上で検討できます。
Q. 「4mmで約80度」と聞きましたが、どの機種でも同じですか?
A. 同じではありません。焦点距離が同じでも、撮像素子(センサー)の大きさが違えば画角は変わります。センサーが大きいほど広く写ります。実際の画角は機種の仕様表にある水平画角の値で確認してください。
Q. 1台で広い範囲も顔もはっきり見たいのですが、可能ですか?
A. 1台で両立させるのは難しく、どちらも中途半端になりがちです。広く見るカメラと、出入口など要所を押さえるカメラを分けるのが現実的です。全方位カメラで全体を押さえ、重要な地点にもう1台という構成もよく使われます。
Q. 4Kにすれば遠くの顔まで見えますか?
A. 画角次第です。ピクセル密度は「画素数÷写している範囲」で決まるため、画素数を上げても写す範囲を広げれば精細さは変わりません。また高画素化により録画容量が増え、保存日数が短くなる点にも注意が必要です。
Q. 設置してから画角を変えられますか?
A. レンズの方式によります。固定焦点は変えられません。バリフォーカルは現場で手動調整が可能、電動ズームは遠隔で変更できます。高所など後から手が届きにくい場所では、調整できる方式を選んでおくと安心です。
Q. 車のナンバーを読み取りたい場合は?
A. ナンバーの読み取りは高いピクセル密度が必要で、さらに車の速度、ヘッドライトの映り込み、夜間の照明条件も影響します。一般的な監視用カメラでは条件によって読めないことがあるため、ナンバー認識に対応した機種や設置角度の設計が必要です。用途と現場条件をお聞かせいただければご提案します。

まとめ
- 「見える」には検知・観察・認識・識別の4段階がある(DORI)
- 必要なピクセル密度は25/62.5/125/250 px/m。目的で10倍変わる
- レンズ選びは「範囲」と「精細さ」の配分。1台での両立は難しい
- 同じmmでも機種によって画角は違う。仕様表の水平画角で確認する
- 高画素にしても、画角を広げれば精細さは上がらない
「この位置から、あそこまで見えますか?」というご相談が最も多く、そして最も重要です。図面や現場の写真をお送りいただければ、どの位置に何mmのカメラを置けば目的を満たせるかをご提案します。お問い合わせフォームまたはお電話(0120-495-666)からどうぞ。
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